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ほっちのロッヂの「なおさん」ってこんな人。#メンバ紹介 #一問一答

ほっちのロッヂでは、さまざまな働き方をする多芸多才なメンバ(=ほっちのロッヂではスタッフのことを「メンバ」と呼んでいます)が活動(=仕事でもあるけれど、自己表現でもあること)に取り組んでいます。この記事は、改めてメンバの素顔や想いに迫るインタビューです。

―― 自己紹介をお願いします。

荻原菜緒(おぎはら・なお)です。なおさんと呼ばれています。医師として働いていますが、肩書きを名乗る時と、名乗らない時がありますね。ほっちのロッヂではみんな、肩書きにあまり関係なく動いているし、ここに来る人は「先生に会いに来る」「看護師さんに会いに来る」というよりも「〇〇さんに会いに来る」という人が多いので…「ほっちのロッヂのなお」です。

—— ほっちのロッヂに来たきっかけを教えてください。

直接働き始めたのは2020年の5月からですが、かかわりを持ち始めたのは2015年に「軽井沢キッズケアラボ」が立ち上がる時。同僚から子どもたちの過ごす場所を探している話を聞いて、私の祖母の家が軽井沢町追分という宿場町の地域にあって、元旅籠屋(はたごや;江戸時代に栄えた街道沿いの宿屋)だった大きめの一間が空いてるけど…と貸し出したのが始まりです。その時、紅さん(共同代表:紅谷)と「軽井沢で訪問診療もやれるといいね」という話もしていて、気がついたらこういう形になっちゃった!

軽井沢キッズケアラボの立ち上げ当初のメンバーには、ほっちのロッヂでおなじみの面々も。

—— 現在、ほっちのロッヂではどういう働き方をしていますか。

週4日、ほっちのロッヂでは外来と訪問診療を担当しています。そのほかは、週に1回佐久医療センターの乳腺外科外来に、月に1回佐久総合病院の地域ケア科で訪問診療に行っています。この地域の医療を担っている拠点同士を行き来しているので、「こういう人がいるんだけど、どうしよう?」という相談を気軽にできたり、入院になった方のお顔を見に行ったりということができていますね。

—— これまでの経歴を教えてください。

宮崎大学医学部(当時の宮崎医科大学)を卒業して、名古屋で研修医をしました。岐阜や東京の病院で一般外科、乳腺外科を経て、緩和ケアにも興味が広がり始めた頃、働いていた病院で緩和ケア病棟を立ち上げることになり、そのお手伝いをさせてもらいました。緩和ケアに関わる中で、今度はだんだん「この人のお家に行ってみたいな」と思うようになり、在宅医療に興味が移りました。ちょうど故郷の軽井沢が恋しくなってきたこともあり、祖母のいる大好きな軽井沢へ帰ってきました。在宅医療で先進的な取り組みをしていた佐久総合病院の地域ケア科に入ったのはこの時です。

—— 緩和ケアに興味を持ったのはどんなきっかけですか。

緩和ケアに関わる前は主に乳がんの診断や治療に関わっていました。経験を積むうちに、病気を治すのが医者の務めと言われるものの、どんなに頑張っても結局治らない人は出てきてしまうし、治らなくてもすごくイキイキ生きている人にも出会って、「何が(しあわせに生きる)鍵なんだろう?」と思い始めて。そんな時に英国の緩和ケアを視察する機会があり、当地ですでに行われていたような、病気と出会ったところからのケアやサポート、生き方をどう考えるかを支える仕事もやっていきたいと思うようになりました。

イギリスのホスピスやキャンサーケアセンターを訪れていた時のもの。自らの経験を通して常に大切なことをシェアしてくれる友人と。

—— なおさんの考える緩和ケアとは?

昔の緩和ケアというと、手の施しようがなくなって、残された最期の時間をどういう時間にするかを考えるケアというイメージがありました。そういう限定的な関わりではなくて、病気と診断された、または診断されるかもしれないという時、あるいは身近な人がそうなった時にどう考えるか、その考えをどう日々の生活に落とし込んでいくか、という包括的な関わり方を目指したいですね。そういうことって、診断してお薬を出す病院の外来だけでの関わりではなかなか難しくて。

—— 病院から“ホーム”へ。在宅医療にできることは?

病院から家に帰ると、「ここは患者さんやご家族にとって本当の“ホーム”なんだな、良かったな」と思うんですよね。だからこそ、家に上がらせてもらっている私たちの立場としては、病院のような「管理」はできないし、したくないんですよ。ほっちのロッヂでは、治療を並行させながらも、その人の想いや生き方を感じながら「もっとこういう風にやれるといいな」「もっとこんな時間を持てるといいな」と思い立ったら、行動に移せている感覚がありますね。

—— 実際に行動に移したことで、良かったエピソードを1つ。

いっぱいあるんだけど…1つだけ。老舗のコーヒーショップの創始者でもあるおばあちゃんが年老いてだんだん自分の中に閉じこもっていく姿を見て、そのおばあちゃんをすごく尊敬しているお嫁さんも寂しい、ほっちのロッヂで関わるみんなも「それは本当に残念だよね」と思ったことがあって。そこで、そのおばあちゃんを家に迎えに行ってロッヂでコーヒーを淹れてもらおう、とみんなで一生懸命考えた。実際に頼んだら来てくれて、自前のコーヒーセットでコーヒーをたててくださった。その厳しい、キラッとひかる眼差しとシャキッとした姿を、お嫁さんが涙を流しながら見守っていました。そんなことが日々起こっています。

ほっちのロッヂの一周年祭で、来場した方にコーヒーを振る舞うMさん。

—— 今後はどういう活動をしていきたいですか。

病院だとどうしても「診療する側としての医療者」と「医療を利用する人」がどうしてもくっきり分かれてしまう感覚があるのですが、ほっちのロッヂだとそういうカッコ付けがないな、と思っていて。誰かが立っている人生と同じ地続きに立っている者として、どう感じたか、どう思ったか、もっとこういう時間にしたいね、という感覚を、みんなでもっとシェアしていきたいですね。

—— 軽井沢をこよなく愛する、軽井沢出身のなおさん。人を包み込むような独特の雰囲気に、ぜひ会いに来てくださいね!

コーヒーを片手に談笑するなおさん(撮影:清水朝子)

あうんの家
毎月第3土曜日になおさんが自宅で開催している、がんと診断された方やそのご家族・ご友人、がんと向き合うすべての方のつどいの場です。コロナ禍により、午前10時30分~12時のみ場を開放。参加費200円~、予約不要。

詳しくは荻原まで(ほっちのロッヂの診療所:0267-31-5517 または あうんの家:aunhome521@gmail.com)

最後までお読みくださり、ありがとうございます。

あの人に届くと、もしかするといいかもしれない、そんなことが頭に浮かんだならば、ぜひ教えて差し上げてください。

ほっちのロッヂにご興味のある方は、よければ、ご友人に直接話をしてくださったり、このnote記事に「スキ」、ツイッターなどSNSでシェアしてくださると、嬉しいです。

ほっちのロッヂ
info@hotch-l.com
話し手:荻原菜緒(なお)
聞き手・まとめ:唐川恵美子(エミリー)
写真:原田風香(ふうこ)
文責:藤岡聡子(さとこ)