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ほっちのロッヂの診療所院長・まちのかかりつけ医「ゆうさん」ってこんな人。#メンバ紹介 #一問一答

ほっちのロッヂでは、さまざまな働き方をする多芸多才なメンバ(=ほっちのロッヂではスタッフのことを「メンバ」と呼んでいます)が活動(=仕事でもあるけれど、自己表現でもあること)に取り組んでいます。この記事は、改めてメンバの素顔や想いに迫るインタビューです。

—— 自己紹介をお願いします。

坂井雄貴(さかい・ゆうき)です。医者をしたり、バラを育てたりしています。ほっちのロッヂの院長としての肩書がありますが、電話対応、訪問先のスケジュール調整をはじめ、ケーキを焼いたり、草をむしったりと、いろいろな仕事をしています。

—— いつからほっちのロッヂに関わっていますか?

軽井沢に来たのは2020年4月です。きっかけは2019年の2月、福井にあるオレンジホームケアクリニックを見学した時に、代表のべにさん(紅谷)から「軽井沢に診療所のようなものを作る」という話を聞いて。同年4月にクラウドファンディングがあり、さとこさん(藤岡)が作った「症状や状態、年齢じゃなくって、好きなことをする仲間として出会おう」というフレーズを見て、「ここで働きたい」と思ったんです。

ほっちのロッヂで、バラを育てています。(写真:清水朝子)

—— ほっちのロッヂの前は亀田総合病院の家庭医としてキャリアを積んできたゆうさん。なぜそのフレーズに魅かれたのですか?

採血の結果や血圧の値だけを見て薬を出して、医者が医療と人の暮らしを突然に結びつけてしまうことは、「医療の対象」「支援の対象」としてその人との間に線を引いてしまうように感じて、抵抗感がありました。病気でないと出会えない存在としての医者ではなくて、その人のありのままと向き合えるといいなと思っていて。

ゆうさんが2016年に訪れたアメリカのカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)での
患者のインクルーシヴネスと安全性を高めるキャンペーン」のキャッチフレーズ。
「私たちはすべての人種、すべての宗教、すべての出身国、すべての性的指向、すべての性別、
すべての民族、すべての障がいを歓迎します。私たちはあなたと共にあります」とある。

—— 「好きなことで出会う」ために、心がけていることは?

自分の考えやパーソナルな部分を出すことです。実はほっちのロッヂに来るまでは、生活者としての自分を人にさらけ出すのが怖くて、地域で生活しながら働くことが怖かったんです。でも腹をくくってさらけ出すことで、人とのつながりのハブが増えていきました。診療所の外来に来る方から、僕が身に着けているレインボーフラッグ(*1)のステッカーやバッヂについて「きれいですね」「それって何ですか?」と対話が始まったり、訪問先の方と自分が育てているバラについて情報交換をするようになったり、診療所では会ったことのない人と趣味の植物やバドミントンでつながったり。

*1「レインボーフラッグ」…6色の虹のモチーフ。LGBTQコミュニティのシンボルとして使用されている。レインボーフラッグを身につけることで、LGBTQコミュニティへの支援や理解を示す。

—— ゆうさんは「にじいろドクターズ」の代表理事として、性的マイノリティ(LGBTQ+;*2)の人たちに医療アクセスを広げる活動もしています。その活動について教えてください。

家庭医になるためのキャリアを積んでいくにつれて、自分がずっと探究してきたセクシュアリティ(*3)のことに取り組んでいきたいと思い、仲間たちと勉強会を始めました。2019年に団体を立ち上げ、2021年に法人化しています。活動は医療者の意識を向上させるための講演や執筆がメインですが、今後は当事者の方たちと直接関わる活動もしていきたいと考えています。

*2「LGBTQ+」…LGBTQはレズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー・クィア/クエスチョニングの頭文字を表し、広く性的マイノリティを表す言葉として用いられる。
*3「セクシュアリティ」…性的指向、性表現、性自認、性役割、生物学的性、性行動などを含めた、広く人の性のあり方を表す言葉。

—— そもそもLGBTQ+当事者の人たちにとって、医療にアクセスしづらくなってしまう背景にはどのような課題があるのでしょうか。

LGBTQ+の人たちは、社会の差別や偏見によって医療者からも心無いことばをかけられたり、同性パートナーを家族としてみなしてもらえなかったりと、医療にかかるときに差別を受けることがあります。医療者が適切に知識を持つことで、困ったときに安心して医療や福祉につながってもらえるようにしたいと思っています。

—— にじいろドクターズを始めたきっかけは?

もともと、活動をやるなら自分自身の背景やプロセスも開示しなければいけないと思って、活動に踏み出す勇気がなかったんです。だから、この分野に興味があるということすら職場で言うのも怖かった。でも、学会などに足を運ぶ中で当事者の医療関係者と知り合う機会があって「LGBTQ+の人やアライ(LGBTQ+の理解者・支援者)の人が、当たり前にいるんだ」ということに気づいた時、「世の中にセクシュアリティのことで悩む人を一人でも減らしたい、皆が悩まずにありのままで当たり前に生きられるために活動していきたい」と思いました。

—— これまで、ほっちのロッヂでの活動とにじいろドクターズの活動が重なったと感じるものはありますか?

今までも何度か学校で性教育の講演をしたことはありますが、2021年度に、隣の風越学園のスタッフと一緒に中学生向けの「こころとからだの時間」という性教育の連続講座を作りました。講座では、性教育でよくある避妊や性感染症などのトピックにとどまらず、ジェンダーやセクシュアリティなど、価値観の根っこから深掘りして探究していく形でできたのはすごく良かったと思います。セクシュアリティで線をひかないことと、ほっちのロッヂの「症状や状態、年齢ではなく好きなことをする仲間として出会う」というところはリンクしていて、ライフワークとして関わり続けたいです。

「こころとからだの時間」で、子どもとからだの権利について話す。

—— ほっちのロッヂを拠点に、どのような場をつくっていきたいですか?

「講演会」「勉強会」みたいなイベントの場や非日常ではなく、日常の暮らしの中で性について一緒に考えたり、伝えられたりする場を広げていきたいですね。そのためにも、医療の専門家としてはもちろん、思春期にセクシュアリティの揺れを経験し、今も考え続けているという一人の人間として皆さんと出会っていきたいです。性のことって、人の根っこだと思うから。

—— 具体的にはどういう活動になっていくのでしょう?

家庭医としてどんな相談にも乗るのですが、「ついでに」「そういえば」みたいな感じで、気軽に性のことについても相談に乗れたらいいなと思っています。

ほっちのロッヂでは、すでに緊急避妊ピルをいつでも出せるようにしていますが、セクシュアル・リプロダクティブヘルス/ライツ(*4)全般についても、性について悩んでいる人と一緒に考えながら、必要があれば治療的なサポートもできるようにしていきたいです。具体的には、性別違和の子どもの支援や性同一性障害を持つ方のホルモン療法、性感染症予防や治療、ピルの処方や更年期・生理の症状などのカウンセリングなど、地域の診療所だからこそできる、一人一人に伴走するような関わりを持っていきたいですね。

*4「セクシュアル・リプロダクティブヘルス/ライツ(SRHR)」…「性と生殖に関する健康と権利」とも呼ばれる。「身体、感情、精神、社会的に良好な状態がセクシュアリティと生殖の全ての局面で実現できていること」を指し、国際的に全ての人が享受すべき権利とされている。

出典:WAS(World Association for Sexual Health); Declaration of Sexual Rights

—— 誰も教えてくれないし、誰にも聞けない。そんな悩みを持っている人は、ぜひ「ゆうさん」に会いに来てくださいね。

外来・面談のご予約:
メール:info@hotch-l.com
電話(代表):0267-31-5519 / (診療所)0267-31-5517

緊急避妊ピルについて:
必要になった方は、「緊急避妊ピルの処方を希望します」とお電話でご連絡ください。なるべく早めの服用が効果を高めます。日曜・祝日でも対応しておりますので、まずはお問合せください。

最後までお読みくださり、ありがとうございます。

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ほっちのロッヂにご興味のある方は、よければ、ご友人に直接話をしてくださったり、このnote記事に「スキ」、ツイッターなどSNSでシェアしてくださると、嬉しいです。

ほっちのロッヂ
info@hotch-l.com
話し手:坂井雄貴(ゆうさん)
聞き手・まとめ:唐川恵美子(エミリー)
インタビュー撮影:原田風香(ふうこ)
文責:藤岡聡子(さとこ)