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ほっちのロッヂ×アート・トーク#1「ケアの現場で撮る」を考える~トークアーカイブと次回トークイベントのお知らせ!

ケアの現場と隣り合いながら文化芸術・アート活動に取り組む「ほっちのロッヂの文化企画」。

ケアの現場でどういう風に実践を積み重ねているのか。
ケアの現場でアート活動に取り組むことにはどんな意味があるのか。

私たちの活動をリアルタイムでお伝えしながら、全国各地・世界各地の取り組みとつながるトーク企画を始めました。

▶ 参加者募集中!3/26(土)に開催
ほっちのロッヂ × アート・トーク #2「人生会議」を文化にする

#1「ケアの現場で撮る」を考える

2021年12月に行われた第1回のアート・トークでは、「ケアの現場で撮る」をテーマに置き、ケアの現場で写真を撮った2つのプロジェクトにスポットを当てました。

ゲストには、茨城県つくば市を拠点に、地域の医療機関と連携しながらアート・プロジェクトに取り組むNPO法人チア・アートさんより、理事長の岩田祐佳梨さん、プロジェクトメンバーの松﨑仰生さん、水畑日南子さん、写真展に参加した写真家さんらをお迎え。

この記事では、当日のトークの様子をダイジェストでレポートします。

▶ NPO法人チア・アートとは…
筑波大学の芸術分野の教員や学生、筑波大学附属病院、筑波メディカルセンター病院など医療機関が2007年に始めた協働実践をもとに、教育現場に留まらず、社会に向けて多様な展開をしていきたいという想いから、2017年にNPO法人化。病院やケアの現場と連携したアートプロジェクトを通して、人々にとって暮らしやすい環境づくりを模索・実践している。

—— 今日は、写真をテーマにした2つのプロジェクトについてご紹介いただきます。
岩田)はい。1つは2020~21年に筑波メディカルセンターで行われた写真展「病院のまなざし」、もう1つは筑波大学附属病院で行われた学生主体の写真プロジェクト「ドリームポートレートシリーズ」についてです。いずれも地域の救急医療や高度専門医療を担う、大きな病院です。

—— まず「ドリームポートレート」について聞かせてください。
松崎)2017~18年に筑波大学附属病院で行われた写真展企画「ドリームポートレートシリーズ」は、病院職員に焦点を当てたプロジェクトです。一眼レフでの写真撮影技術や、合成ソフトで写真を加工する技術を学ぶ授業の一環として、筑波大学の学生が病院職員の夢や興味関心をテーマにした作品を制作しました。学生はただ撮影するだけではなく、それぞれの職員が実際に仕事をしている現場を見学し、職員にインタビューをして作品の構想を練っていきました。取材を通じて、被写体となる職員の具体的な仕事の内容や職業人としての姿勢はもちろん、人柄や、密かに抱いている夢も「その人らしさ」の一部として作品へ落とし込んでいきました。

実家が呉服屋のお医者さんの、過去に思い描いた将来の夢や、プライベートで好きなことを散りばめて。

作品を通して、職員の仕事だけでなく人柄も知ってもらうことで、病院の雰囲気をあまり好きではないと思っている人も、少し違う見方をしてもらえるようになる効果があるのではないかと感じました。

—— コラージュや合成技術ならではの、お茶目でユーモアのある作品が多いですね!一方の「病院のまなざし」は、どんなプロジェクトですか。
岩田)写真展「病院のまなざし」は、新型コロナウィルスが流行し始めた中で構想しました。当時は院内の緊張感も高まっていて、マスクやフェイスシールドのために表情が読み取りにくい状態になったり、面会制限がかかってご家族の方が患者さんになかなか会えないといった状況が起こっていました。そういった状況では、患者さんがどんなスタッフにケアされてるのかが伝わりにくくなるんですね。こうした状況に対して、アートプロジェクトを通して何かできないかなと考えました。
 他の病院の取り組みをリサーチしていく中で、過去に訪れたイギリスの病院では院内の至るところに職員のかっこいい写真が飾られていることを思い出しました。また、『介護男子スタディーズ』というプロジェクトでは、介護している男性がかっこよく写真に撮られている。ケアの現場ではないですが、『帝国ホテルの不思議』という書籍でも、ホテルの裏舞台がどんな風に、どういうプロフェッショナルによって構成されているかというのをレポートしているんですね。これらの取り組みを参考にしながら、「こういうプロジェクトが今の病院に必要なんじゃないかな」と思い、今回の企画を思いつきました。
 このプロジェクトでは、合成技術を使わずに、病院職員のありのままの日常の姿をとらえました。写真を撮影してくださったのは、つくば市を中心に活動されているカメラマンの石附雅代さんと、看護師兼カメラマンである須藤ゆみさんです。そうして出来上がった作品を、5つのセクションに分けて展示しました。

1)患者さんを迎える
2)治療を支える
3)命と向き合う
4)患者さんを見守る
5)病院を支える

—— 展示に対してどんな反応がありましたか。
岩田)私たちにとって発見だったのは、マスクをしながら被写体となる職員の表情がどれだけ出るのか不安だったのですが、目だけ、まなざしだけで、これほど患者さんに伝える力があるんだなということです。それに、ドクターヘリが来たり、救急車やドクターカーに乗り込むまでの救急の現場、それを支える事務スタッフの緊張感を改めて見させて頂いて、医療現場のすごさを改めて肌で感じました。
 利用者さんからは、大変な状況下で働く職員への感謝の声、笑顔で映っている写真や、真剣に職務に当たっている姿を見て、職員の人間性や多様な側面を感じたといった言葉を頂きました。また、自分やご家族が受けている医療行為に対して安心感をもったといった話も伺いました。
 職員からは、普段関わる事のない少ない多様な職員が現場を一緒に支えあっていることが感じられ、ほかの職員の笑顔や頑張っている姿を見て自分も頑張ろうと思えたという声などを頂きました。

(報告前編 おわり)

3/26(土)は、第1回にもお招きしたかったものの、日程の都合で出演がかなわなかった写真家兼訪問看護師の尾山直子さん、尾山さんの表現活動を陰で支える神野真実さんをお招きします。

訪問看護先で出会った、1人の人の生き様を静かにとらえた写真展「ぐるり。」を制作した尾山さん、尾山さんの写真展を裏で支えながら、自身も「生きるを終えること」をテーマにデザイン・リサーチを実践する神野さんと共に、生きるを終えることについて考えます。

#イベント詳細

▶日時:
2022年3月26日(土)13:00開室 13:30開始 15:00終了
▶場所:オンライン(配信URLはお申込み後お知らせします)
 お申込み → peatixイベントページ
▶定員:100名
▶参加費:無料(ワンコインで応援する気持ちもプラスできます)

▶出演者:
・司会:唐川恵美子(ほっちのロッヂの文化企画)
・パネル報告:尾山直子(桜新町アーバンクリニック)、神野真実()
・ディスカッション:
唐川、尾山、神野
+西川理奈(ほっちのロッヂ まちの看護師)
+ほっちのロッヂの飛び入りメンバ

▶スケジュール(計90分):
スケジュール:
13:30-13:40 オープニング(10分)
13:40-14:00 プロジェクト報告①写真展「ぐるり。」について(20分)
14:00-14:10 ディスカッション①(10分)

- 休憩(5分)-

14:15-14:35 プロジェクト報告②「おじくじ」について(20分)
14:35-14:45 ディスカッション②(10分)
14:45-15:00 質疑応答(15分)

# もっと気になる方に

尾山直子写真展「ぐるり。」
ほっちのロッヂの文化企画

主催:ほっちのロッヂの文化企画
共催:特定非営利活動法人チア・アート

ほっちのロッヂ
info@hotch-l.com
書き手:唐川
文責:藤岡