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③福祉と教育、どう応答していくのだろう? #ケア文0202

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第一回ケアの文化・芸術展の概要、感想・つぶやきのアーカイブ
「ほっちのロッヂ」、 軽井沢町で試みるケアの文化拠点プロジェクト
▶︎③福祉と教育、どう応答していくのだろう?
福祉とアート/サイエンスへの好奇心の接続 トーク&セッション
【老いと演劇】ワークショップ「いつか老いる自分にかける言葉、仕草、眼差しを問う」
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この記録は、2019年2月2日(土)「第一回ケアの文化・芸術展」のプログラム、【福祉と教育、どう応答していくのだろう?】トークセッション にて、語られたものを編集したものです。当日の様子を体験していただくため、出来るだけ口語表現にしています。
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語り手:
一般財団法人軽井沢風越学園設立準備財団 副理事長 岩瀬直樹さん

「ほっちのロッヂ」共同代表・医師 紅谷浩之
「ほっちのロッヂ」共同代表・福祉環境設計士 藤岡聡子━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ー岩瀬さんは学校をつくられていらっしゃるんですね。どんな学校をつくろうとしているのかお話しいただきたいと思います。それではよろしくお願いします。

岩瀬さん:こんにちは、岩瀬です。僕は小学校の教員を22年間やっていました。その後、東京学芸大学教職大学院で教員養成に3年間関わって、現在は軽井沢風越学園の学校づくりに関わっています。大学も辞めてしまい、もう後はないので、3人の子どもが食いっぱぐれることのないよう頑張っていきたいと思っています。(一同笑い)

設立を目指している軽井沢風越学園について簡単にご紹介したいと思います。軽井沢風越学園は、幼稚園・義務教育学校、施設一体型の学校です。幼稚園が1学年24人ぐらいで、年少・年中・年長。そして小学校1年生から中学3年生まで各学年35名程度が一つの校舎の中で一緒に暮らし、遊び、学びます。よく”一貫校”って言われるんですが、僕らの中では幼小中の”混在している学校”、をつくろうとしています。

学校の場所は、ほっちのロッヂと町道を挟んで、お向かいです。順調にいけば2020年4月に開設予定です。森の中に校舎があって、森の中で学んだり校舎の完成予想図はこんな感じです。なかなか素敵じゃないですか?
僕の小5の娘に見せたら大江戸温泉物語みたいって言われました(一同笑い)

(扇形の建物、浅間山に向かって。校舎と私たちの願い よりお借りしました。)

浅間山の方から見るとこんな感じに見えます。僕らは、どんな学校をつくろうかと議論して迷ってまた戻って、という繰り返しをしていますが、【じっくり・ゆったり・たっぷり遊んで・学ぶ】というのを大事にしたいなと思っています。
どんな学校をつくりたいかを考えるのではなくて、子どもが幸せな子ども時代を過ごせる場ってどんな場か。その一つが結果として学校という形になればいいなと思っています。

どうしても学校というのはやりたいことをやるよりも、決められたことを時間内にやる、と決められていることが多いです。
でも”学ぶ”ってなんだろう?と考えたときに、やりたいことにじっくり取り組む時間がたっぷりあって、その中で学んだり、その中から得るものってたくさんあると思うんですね。人が学ぶ・遊ぶ姿って、じっくり・たっぷりが保証されていることが大事であり、人の学びの原点だなって、思っています。

幼稚園・保育園では、比較的やりたいことをじっくりやる時間が、たっぷりあることが多いのに、学校だと急にそうならなくなっちゃうこと多いですよね。
でも小学校・中学校でこそ、じっくり自分のやりたいこと、興味のあることを取り組む時間をたっぷりとりたいそういう子どもたちの探究を大人たちがゆったり見守る。その試行錯誤の中からたくさん大事な経験をしていくんじゃないかなと思っています。

もう一つ、混ざるということが大事だと思っています。同じ学年で分ける・時間で分ける・教科で分けるなど、分ける方が効率的で順調に進みやすいから、分けるっていうやり方がこれまでの教育現場の中心だったんだけれども、もう少し混ぜてみてはどうか。
違うものが混ざることで、緩やかな関係性の中で一緒に居場所をつくる経験を子ども時代にたくさん積み重ねていくのが、原体験だなと思うんです。

できるだけたくさんのことが混ざっていくっていう場所にしたいなと思います。例えば学校って学年ごとに学ぶことが多いですよね。異学年で学ぶと、たとえばこんな様子です。

2年生と6年生が一緒の空間で混ざるとどうなるか。
ここで、岩瀬さんが公立小学校の教員をしているときに、
実践された様子を動画で紹介してくれました。

ケアする・される、ではなくて、自然に活動するんですよね。いい感じにやってますよね。6年生もすごい先輩っぽい感じ。(一同笑)終わる時にアドバイスしたりするんですよ。ここはこれから、こういう風に学んだらいいよって。(一同笑)

(校舎1階の図面 校舎と私たちの願い よりお借りしました。)

校舎の中には、できるだけ混ざりやすい空間をつくります。大きなライブラリの空間を建て物の真ん中に据え、いろんな年代が混ざりやすいような設計にしました。入口横のコミュニティスペースはいわゆる家庭科室と畳のスペース。お迎えにきた保護者や、ほっちのロッヂの人など地域の人がふらっと立ち寄って、おしゃべりしたりお茶が飲めたりするスペースです。
校庭には木を残していて、子ども達が自由に遊べるような空間を目指しています。

ゆったりたっぷりじっくり混ざっていく。そして○○したい、という子どもの情熱から始まるもの、没頭したいという気持ちを大事にしたい。これは、ほっちのロッヂが目指す、その人がしたいことから始まっていく、という意味では共通しているんじゃないかなと思います。

ここからは子ども達の何々したいという気持ちから
生まれた活動の写真をうつしていただきました

学ぶ環境って、自分達から作ることが出来ます。教室の中に畳があって、そこで縫い物したり、みんなで一緒に作ろうよって言うとより想像力が発揮されたり。やりたいことが集まっている場所を自分で動かしていけば周りが変わるんだ、そんなことが体験できるように、軽井沢風越学園はしていきたいなと思っています。

軽井沢風越学園はサマースクールを毎年行っているんですが、昨年のテーマは「○○すぎる○○」。自分が探究したいことを決めて一人一人探究する四日間です。

ここで「大きすぎる剣」、「でっかすぎる太陽」を
探究した話をしてくださいました。

(「でかすぎる太陽」をテーマにした男の子。太陽は地球の大きさの110個分だと調べてわかった次に、重さはどれくらい違うんだろう?という問い。【ご報告】サマースクールを実施しました。よりお借りしました。)

今カリキュラム作りをしています。これから開校までの1年かけてスタッフと少しずつつくっていきます。
異年齢が混ざる。子どもだけじゃなく大人も混ざっている。子どもも大人も○○したいという情熱から学ぶこと。教育する・されるという関係性ではなくて、また、保護者が学校に預ける・預かるという関係性じゃなくて一緒に学ぶという環境をどのように実現するかというのが、僕らの探究でもあります。

そしてほっちのロッヂがあることで、どんなことが起こるだろうか。子どもたちが遊びに行って、勝手に果樹を食べて怒られてたりとか、いろんな部屋に入り浸ってたりとか、宿題手伝ってもらってるだとか、なんかそんなことが色々起きそうだなあと思って話を聞いてワクワクしています。

ここからは、フリートークが始まりました。

藤岡:岩瀬さん、最初にほっちのロッヂの構想を聞いて、率直にどんな印象でしたか?

岩瀬さん:どんなことが起きるだろうか?とわくわくしましたよ。
たとえば介護施設に子どもたちが訪ねて、歌を歌うようなことって、全国的にもやってるんですよね。でも、どこか非日常のごっこ遊びっぽい。それが目的化している気がして。もっと日常的に人が出入りして関係ができるともっといろんなことが起きるだろうなと思うんですよね。

子どもが学校帰りに道路を渡って向かい側のほっちのロッヂに行って、何人かそこで遊んでるとか時に何かで怒られているとか、子どもが学校の畑で作ったものを、よし、ほっちのロッヂに売りに行こうと言ったら逆に買わされたみたいな。人と人が一緒に暮らすことで起きるだろうということにすごくワクワクしますね。
ごっこ遊びじゃない、本当のことが子どもが育つ中でとても大事だと思ってるので、それが起きやすくなるんじゃないかなと思いますね。

藤岡:本当の事っていうキーワードで言うと、紅谷さんがやりたいことがあるんですよね?

紅谷:風越学園っていうのは部活動がなくて、近くのスポーツ施設などでそれぞれに行うと聞いています。僕自身はスポーツ苦手な子だったので、スポーツしか選択肢がないともったいないなっていうのがあって。
ほっちのロッヂの診療所に来てくれたら、子どもたちの学びの場になるといいなと想像していて、その中で思ってるのが、子どもたちと一緒に往診とか行けたらなと思っているんです。診療助手みたいな、ケアクラブみたいな。訪問看護に一緒について行く。
中学生ぐらいになったらヘルパーの一番手前の資格は取れちゃうんですね。そうすると仕事になる。お小遣い稼げる。中学校卒業する頃には、2,3人のおじいちゃんおばあちゃんの看取りを経験してきたような子どもが出たりする。

人は亡くなることがポイントではなくて、生き抜くということがポイントになる。しっかりそれをみせられるんじゃないかと思いますね。

岩瀬さん:すごいすごい。ワクワクします。本当にごっこ遊びじゃないですよね。
人が育つを考えたとき、どうしても学校という枠でがっつり考えちゃう。学校で何を学んだらいいか、より幸せになれるんだろう?と思うんだけど、軽井沢風越学園だから何をするかじゃなくて、軽井沢という町の中で大人達とどう出会っていくか、どんなことをするか、で育っていくと思うんです。

だから、ちょっと一週間ほっちのロッヂにいってますって、学校に来ない子がいたとしても登校しているのと同じだなって。登校って学校に来ることじゃなくて自分のやりたいことを精一杯学んでいることが登校なんじゃないかと思うんです今日はケアについて勉強してくるから、学んだことは後からメールで送りますとかって、これから十分あり得るなと思いますね。そうなってくると面白いなあと。

紅谷:それを学校の先生側から行ってもらうってすごいことだなと思いますね!(一同笑)

紅谷:それから、日本一学校にいる学校医を目指したい、という話をしてるんです。興味がある子がいると聞いたら、ちょっと診療所にいないと思ったら学校に入っちゃってるという感じ。
当然私たちがそばにいるということで医療的ケアが必要な子どもたちが入学しても、万全にサポートができるんじゃないかなと思っています。

そういう意味でも混ざり合うような環境づくりが、医療側からも出来ると思っています。医療として入っていくんじゃないんだけれども、そういうのが得意なおじさんとして入るっていうことですね。

岩瀬さん:きっと動き出してみないとわからないことですけれど、すごくうまくいくこととか、すごく悩むこともたくさん起きるかなと思うんです。でも、きっと大事なこととかその先に起きる事ってまだ僕らが見たことないことでも、起きている事は、きっと自然な、当たり前のことだと思います。

ほっちのロッヂだけじゃなくって、軽井沢町の色んな学校ととも繋がりながら、これからも一緒に大人も子ども幸せに暮らせる場所を作りたいなと思います。

ー今日は、ありがとうございました。