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COFFEE SHOP KAIDO の幻の一杯。

開店日を知らせるものはない。
別荘客に急かされて、はいはい、じゃあ今週末ぐらいから。
出入りする人がおやつを持参する。
ラウンドカウンタが、席と席の距離を和らげる。

「よう来たね。美味しい珈琲入れてやるだに。」

仕入れた豆を目の前で挽く。
1976年に書かれたある人のサインを見上げる店主。
「あれがここを開いて2年後だから、1974年からね。ここは。」

どのくらい使っているのだろう、コーヒーサイフォンが目の前にある。
フラスコとアルコールランプ。NHKラヂオから話し手に子がアサガオの育て方を聞いてる様子が聴こえてくる。
あれ、ここはどこだっけ。
文字通り時間が戻っていく感覚に陥る。

店主の年齢と気まぐれによっていつ開くかもわからなかった店にようやく来れ、目の前にそっと置かれた珈琲はあまりにも奇跡の上に成り立っていてなんだか幻のような感覚になった。
その珈琲の味は、苦味が程よく、でもまろやかすぎない。もしかしたら、同じものはもう2度と飲めないかもしれないと思わせてくれる、なんだか宝物のよな味だった。これぞ、渾身のコーヒーブレイクだと思った。

足が痛むという店主に代わって配膳を手伝って、帰る私に、店主はなんども言った。
「また 待っとるよ。」


「COFFEE SHOP KAIDO」
町立風越公園 グラウンド近く
2019年のゴールデンウィーク連休最後に2日間ほど開いていた。
その後は週末に少しずつ開け、8月は店主曰くやるそう。その後はおやすみされるか、どうするか。


1、「COFFEE SHOP KAIDO」の幻の一杯
#渾身のコーヒーブレイク